◆ ショーハショーテン!の「絶唱サンドバッグ」の素晴らしさを語りたい話

「ショーハショーテン!」
というマンガをご存知でしょうか。
小説家である浅倉秋成先生が原作し、かのデスノートの小畑健先生が作画のマンガです。
小畑健先生が作画されてるだけに、絵はものすごく上手です。
……。
「アインシュタインは頭がいいです」みたいな意味のないテキストな気がしますが、とにかく上手です。
めっちゃシリアスだったデスノートの作画に比べて、すごくいい意味で「コミカル」な形に作画が進化されていますので、流れるように読めます。
そして作画だけでなく、話も素晴らしく面白い。
マンガのテーマは「お笑い」です。
主人公たちが、お笑いで高校生日本一を目指す、という王道ストーリーです。
お笑いをテーマにしたマンガといえば「べしゃり暮らし」が有名ですが、あちらは全体的に暗い要素が多かったので、個人的にはこっちの方が好きです。
作中のコントや漫才の内容が、読んでいて普通に面白く、それでいて涙やドキドキもあり、最初から最後まで退屈しません。
すでに完結していますが、連載されていた当時は、趣味が共通する友人の医師に
「今連載されている全マンガの中で一番面白いマンガだよねコレ」
と言われて激しく同意しました。
(「自分のマンガは?」とは聞きませんでした)
さてこのマンガで何より語りたいのは、主人公のコンビではなく、敵である「最強のライバル」についてです。
その名も「絶唱サンドバッグ」というコンビ。
すごくイヤミな美形二名なんですが、彼らのお笑いには哲学があります。
まず彼は、
「もとはイジメられっ子」
でした。
しかしそこから、
「自分たちがイジメられないために、嘲笑できるヤツを他に探して、それを攻撃することで、自分たちがイジメから脱し、さらに人気者になる」
という戦略を取ったのです。


これ、すごいなぁ、と。
そもそも彼らは、こんな内容を主張します。
「イジメはいけないこと」と言う人間は多いが、それでも「誰かをイジメたくなる」のは人間の本性である。
さらに世の中の笑いは、大半が、劣った人間や無知な人間にたいする「嘲笑」である。
いや、真実をついている。
実際に心理学では「黒い羊理論」というものがあります。
白い羊たちが、黒い羊を見つけて集団で攻撃するように、人間は少しでも異質だったり劣ったりしているものを見て、イジメる…というわけです。
歴史上における魔女裁判や公開処刑などを見るまでもなく、ネットで日々起こっている炎上や攻撃を見ても、その本能はめちゃ分かる気がします。
なのでその本能を受け入れた上で、とにかく「自分たちが嘲笑を先導する」。
これが彼らの確立した方法論、というわけです。



これね、批判もあるかもしれないんですけど、自分は、素晴らしいと思います。
もちろん「新たに嘲笑した人がリアルな人で、その人がイジメられる」結果になったら、良くないとは思いますけども。
しかし彼らの場合、それが「いそうだけど目の前にはいない、想像上の存在」だったりします。(田舎のヤンキーとか)
なのでダイレクトにイジメ対象が移るわけではありません。
これ、「イジメられている」という人への、解決策や逆転策の一つとしても提唱できる方法論ではないかと考えます。
もちろん全員が全員実践できないにしても、一つの答えかと。
ちなみに対象的に、主人公たちは
「誰もキズつかない笑い」
を求めて、「自虐ネタ」や「おかしなキャラクタ」を演じたり、また「型破りな笑い」を模索したりします。
いえ、それも分かる! 分かるんですよ!
すごいことですよ!
でもそれは、一部の天才にしかできないこと、かもしれません。
しかしこの「絶唱サンドバッグ」の示すものは、ある意味誰でも使える、または近いことができる、万能の方法論であり、多くのイジメられっ子に希望を与えるものなのではないか、と思うのです。
実際、マンガ内では彼らの結末は………なんですが、個人的には、このマンガにおいて、もっとも偉大なキャラクタたちだったのではないかと思ったりしています。
それが語りたかった。
何にせよマンガとしてはとてもとても面白いので、ぜひお読みください。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)
画像は「ショーハショーテン!(集英社・浅倉秋成・小畑健著)」から引用しております。
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